(日循協作成の循環器疾患診断の手技・判定基準・診断基準)
●血圧とは |
血圧とは、心臓のポンプ作用によって全身に血液が送り出されるとき、血管の壁に与える圧力のことで、心臓が血液を送り出すために収縮したときの血圧を最高血圧(収縮期血圧)、心臓が血液ためるために拡張したときの血圧を最低血圧(拡張期血圧)といいます。 ・血圧には5つの因子が作用しています。その @は、心臓のポンプ作用の変化や強弱、 これらの因子のどれかがおかしくなり、とくに高血圧になると、それが成人病を誘発していくことになりますから、成人病を予防するためにも欠かせない検査といえます。また、ふだんの健康状態を知る上でも重要な検査です。 高血圧症の原因は一つではありません。遺伝的素因も関与しているでしょうし、近年の生活様式の中での様々なストレスや生活習慣が関係しています。喫煙は心拍数を上げ、同時に血液中の酸素量を低下させます。脂肪や糖分のとり過ぎは、肥満や血液中のコレステロール上昇の原因となり、また心臓への負担を増加させることになります。アルコールの飲み過ぎも同じような影響を与えます。食塩のとり過ぎや運動不足も高血圧症の原因となります。 |
●高血圧症とは |
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高血圧というのは、血圧が高いという1つの症状です。たまたま測った血圧が、高い時には血圧が高いといえますが「高血圧症」とは言い切れません。高血圧症とは、いつ測っても血圧が正常より高い場合をいいます。1983年以降、WHO(世界保健機構)のガイドラインが広く使われてきました。WHOでは、最高血圧が100〜140mmHg
、最低血圧が60〜90mmHg
までが一般に正常とされ、最大血圧で140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg
以上が持続する場合、「高血圧症」と診断されます。このガイドラインは、欧米のデータを参考にして作られていましたので日本高血圧学会では、厚生省の支援を得て、2009年に新しいガイドラインを作成しました。
新しいガイドラインでは、家庭での測定値が新たに設けられました。家庭で血圧を測定される方が多くいらっしゃることと、家庭と医療機関での測定値に差が認められることが背景として考えられます。家庭での測定値が5mmHg低い設定となっています。
ちなみに、日本で、約3,000万人の高血圧症患者がいると推定されていますが、実際に十分な治療を受けている方は30%程度しかいないと言われています。 |
●血圧計の測定原理 |
動脈は弾性に富んだゴムホースのような構造をしています。外部からそのまわりを圧迫すると、中を流れる血液を容易に止めることができます。血流を止めるのに必要な外部からの圧力は、血圧に比例しています。そこで、腕の動脈で血流を止めたり通過させたりして、血圧を測定することができます。 血圧の測定方式には、以下の2通りがあります。 @コロトコフ法(別名:聴診法、K音法) コロトコフ音(Korotkoff sounds)法は、動脈をカフ(腕帯)で締め付け、一旦血液の流れを止め、その後空気を抜いた時に血管内で発生する“音(脈音)”を聴診器を用いて測定する方法です。聴こえ始めの脈音を「最高血圧」、脈音の消失時を「最低血圧」とします。 Aオシロメトリック法 上記同様、一旦途絶えた血流が脱気により開放され流れ始める時の、血流より発生する動脈壁の“振動”をセンサーで捉えて測定する方法です。電子式血圧計と呼ばれ、家庭で普及している血圧計はほとんどがこのタイプです。聴診器を使用しませんので、@法との区別は容易です。 皆様ご存知の世界保健機構であるWHOの血圧判定基準に合致しているのは、@のコロトコフ法(別名:聴診法、K音法)です。聴診器を用いて測定する測定器具は、 ・水銀式血圧計 の3タイプがあります。例えがうまくありませんが、家庭内の時計で説明させてもらいますと、家に散在する数々の時計はピッタリ正確なものもあるかもしれませんが、多少ともずれている時計もあるかと思います。この中で信頼できるのは、テレビに表示される時計数値です。これが、WHOの推奨する「コロトコフ音法」で測定された上記3タイプでの測定数値です。皆様の会社の医務室やかかりつけの病院は、@ですか?Aですか?病院の場合、外来診察室では電子式血圧計であったとしても、先生のいらっしゃる診察室で、先生が測定される方法は、“聴診法”であって欲しいですね。なぜならば、先生が降圧剤を処方しその量を決定されるからです。さらに厳密に言うと、正確な投薬量を決めるのは、日々の「家庭内血圧」のデータが必要です。いくら、正確な聴診法で測定されても、病院という緊張感高まる環境の中では大勢の方が血圧が高い状態にあります。正常な人でも異常値となり、異常な人は更に高値となってしまいます。したがって、上記の血圧計にて日々の測定データを記録して受診されることをお奨めします。 | 前のページに戻る | |
●測定前の注意事項 |
血圧は、運動・安静・入浴・排便・食事・睡眠・体調・精神緊張等の条件で著しく変わります。測る前には、5〜10分位安静にし条件を一定にした状態で測ることが望ましいです。また、いつも同じ腕・姿勢・時間に測るようにしましょう。 <環境の条件> 1.静かな部屋で、室温は寒さ暑さを感じない程度に保ち、室温は20〜25℃とします。 <被検者の条件> 1. 測定前の運動、食事、タバコ、血圧測定値に影響ありと考えられる条件をさけるようにします。 2.あらかじめ排尿し、測定前5分以上の安静をとったあとに測定します。 3.体位は椅子の座位とします。臥位の場合はその旨記録します。 4.測定部位は右上腕、左の場合は記録します。 5.上腕を緊縛する衣服を着ている場合は脱衣のうえ、マンシェットを巻きます。 |
●測定方法(水銀式の場合の測り方) |
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●一人で測れる水銀式 (学生さんの練習にも最適タイプ:2018年に生産中止となりました) |
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基本的に水銀式血圧計は、測定する人と測定される人の2人で行われますが、ご家庭等では測定してくださる適切な方がいらっしゃらない、いつでも好きな時に測定したい、そのようなニーズにお応えするために開発された水銀式血圧計です。 腕帯が一人で簡単に巻けるように工夫されており、「聴診器」が腕帯に固定されています。実際に使用してみますと、予想以上に腕帯の装着が簡単で容易に測定することが出来ました。詳細はこちらを、クリックしてください。
備考)学生さんが練習用に当店で販売しております601というスタンダードタイプを購入されますが、一人で練習される場合にも腕帯が簡単に巻けますので学生さんの練習用としても最適です。1人前になられた後、ご家族用にと有効活用される場合を考えられますと利用価値の高い「水銀式血圧計」です。 |
●高血圧のいろいろ |
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単に値だけではなく、状況によって以下の「高血圧症」が存在します。
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●測定方法(電子式の場合) |
1.自動血圧計を、振動が少なく操作しやすい位置に安定させて置く。 2.電源が交流式の場合には、スイッチを入れてから5〜10分以上たってから、血圧測定を開始します。 3.マンシェットの空気を完全にぬいてから、マンシェットに装着されているマイクロフォンなど血圧情報検出のためのセンサーがあらかじめ決められた上腕の所定の位置に密着するように巻く。巻き方は、ゆるからず、かたからず、マンシェットの下縁が肘窩にかからないようにきちっと巻く。 4.測定の際には、肘関節を伸展させ、測定部位の高さは心臓と同じ高さとします。 5. まず、排気バルブを閉じ、血圧測定に必要かつ充分な加圧をした後、バルブを静かに操作しながら排気速度を調節して血圧測定を行います。 6. 圧の下降速度は1秒間に2〜4oHgとします。 7. 圧目盛り表示がメーター式の場合には、測定値の末尾の読みは偶数読み(2oHg単位)とし、中間の場合は低い方をとる。デジタル式の場合には、表示の数値をそのまま直読して測定値とします。 8. 血圧測定中は、自動血圧計、とくにマンシェットとその付属するゴムチューブへの振動は極力さけるように配慮します。 |
●測定結果について |
2回測定してください。1回目と2回目の差が、 ・5mmHg以内の場合:2つの平均を値としてください。 ・5mmHg以上の場合:少し間をおいて再度2回測定してください。 毎日決まった時間に測定し、カフェインなどの刺激物は避けてください。 多少血圧が高くても、1度だけの検査で高血圧症と判定されることはありません。しかし、何回か測定して最大血圧で140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg 以上が持続する場合、「高血圧症」の定義に該当しますので、原因を調べるための精密検査を受けてください。 |
●高血圧症から起こる病気 |
血管の壁は本来弾力性があるのですが、高血圧状態が長く続くと血管はいつも張りつめた状態におかれ、次第に厚ぼったく、しかも硬くなります。そして、一部では脂肪やカルシウムが付着し、血液の流れを悪くします。これが高血圧による動脈硬化で、この動脈硬化は、大血管にも、小血管にも起こり、治療をしないままに長期間放置しておくと、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎臓病、眼底出血などの原因となります。また、狭心症、心筋梗塞、心不全や心臓発作など心臓病の合併症を起こしやすくなり、生命の危険にも関わってきます。そのため、高血圧のことを「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」などとも呼んでいます。 高血圧症は自覚症状がほとんど無く、直接の死因となることもほとんどありませんが、高血圧症と診断された場合には、これらの合併症を未然に防ぐために、治療を続ける必要があります。治療によって血圧が一旦正常値に戻っても、定期的な血圧測定を継続して、コントロール状態を常にチェックすることが大切です。 |
●高血圧がもたらす悪循環 |
高血圧が続くと血管の内皮が障害を受け、その部分からコレステロールが入り込んで行きます。入り込んだコレステロールは酸化されて「酸化LDLコレステロール」と変化します。次にこれをマクロファージと呼ばれる白血球の一種が次々に食べていきます。これを繰り返すことによりだんだんとその部分は膨らんでいき、「プラーク」と呼ばれるコブを形成しこれが動脈硬化となります。 この結果、血管の通り道が狭くなっていきます。当然、血液の流れが悪くなってきます。そして、血管は固くもろくなってきます。(屋外で長年使用されているゴムホースを連想されてください)そうすると、血管内の抵抗増えますので、心臓はより強い圧力で押し出さなければなりませんので、また血圧が上昇するという悪循環になります。 さらに、内皮細胞の一部分が剥がれ、そこに血小板が固まって広がっていくと血液が流れなくなり当然この先の細胞には酸素の供給が行われず死んでしまいます。また、固まった血小板が剥がれて血栓となり流されていくとその先の細い血管が詰まってしまいます。これが、脳で起ると「脳梗塞」、心臓だと「心筋梗塞」、腎臓だと「腎硬化症」になってしまいます。 腎臓では動脈硬化により血液流量が減少することにより、もっと血液を流し込むよう指令を出します。この命令物質が「レニン」と呼ばれる酵素です。この物質は心臓に血圧を上げるように働きかけます。 このように、高血圧と動脈硬化は密接な関係にあり腎臓も巻き込んだ悪循環が構成される結果となります。加齢と共に動脈硬化が進んで行きますので日常の血圧をしっかりと管理し必要に応じて、「食事療法」、「薬物療法」さらに「運動療法」とバランスよく取り組むことが大事です。 |
● 日常生活の注意事項 |
健康的なライフスタイルとは? ストレスは高血圧症にとって良くありません。十分な休養と気分転換に心がけましょう。 十分な睡眠(7〜8時間)をとり、1日の疲れやストレスを取り除きましょう。 喫煙は高血圧症に良くありません。タバコは血管を収縮させる働きがあるからです。禁煙することが最良です。夏のエアコンでの冷やし過ぎは良くありません。部屋の内外の温度差を小さくしましょう。 お風呂は、ぬるめのお湯(38〜40度)でゆっくりと入りましょう。 運動について 運動を始める前に、最も効果的で安全な方法を知ることが大切です。必ず医師と相談し、あなたに適した運動をおこないましょう。運動を続けていると、血圧に良いだけでなく、さまざまな生活習慣病(糖尿病や高脂血症)の予防にもつながります。 食生活と生活習慣について 人によって、塩分の高血圧症への影響はさまざまですが、塩分のとり過ぎは高血圧症の大敵です。毎日の食事療法の塩分を見直しましょう。それとともに、野菜や果物でカリウムを補充したり、良質のたんぱく質を多くとり、バランスの良い食事に努めましょう。 1)食塩制限6g/日未満 *野菜・果物の積極的摂取は、重篤な腎障害を伴う患者さんには、高カリウム血症をきたす可能性があるので推奨されません。また、果物の積極的摂取は摂取カロリーの増加につながることがあるので、糖尿病の患者さんでは同様に推奨されません。 |
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